症例A.T様

他院にて、抜歯が必要と診断され、何とか残せないかと当院を受診されました。右下5番目の歯の根の先に膿が溜まっているため、抜歯が必要と説明を受けたとのことでした。

CTでの検査の結果、大きな根尖病巣が認められました。歯冠(歯の見えている部分)の大きさより、膿のたまっている範囲の方が大きい状態でした。病巣が歯冠より大きい場合は、歯を残せる可能性が著しく低下すると言われています。今回は抜歯の可能性も考えられる事を説明し、精密根管治療で保存を試みました。

歯の詰め物を丁寧に除去していきます。

う蝕検知液を使い、丁寧にう蝕(虫歯)の部分を除去します。

う蝕除去後、歯が薄くなったところをコンポジットレジンで補強します。補強した部分を隔壁と言います。

歯の根の中に残っているガッタパーチャーという防腐剤を確実に除去し、根管内を確実に洗浄し感染源を除去します。

ガッタパーチャーを除去した後、膿と出血が認められました。炎症、感染が大きく波及していることが認められます。

その後、排膿はなくなりましたが、咬んだ時の違和感が消えないため、繰り返し消毒を行いました。根の中はきれいになっていることが確認できます。患者さんの都合により治療の期間が開くこともありましたが、仮の詰め物も取れず、生活に大きく支障はなかったそうです。

術前

術後

ごくわずかな症状が残るとの訴えがあり、状態を確認するためにCTを撮影しました。CTにて病巣が縮小し、骨ができていることが確認できます。

CTで確認後、その次の来院時には違和感はほぼなくなったとのことでした。気になっていたので違和感を感じていたが、CTで治っていることを確認できたことで安心したので違和感がなくなったのかも。とおっしゃっていました。患者さんと相談の上、封鎖性に優れたMTAセメントを用いて、根管充填を行いました。

年齢/性別女性
治療期間13ヶ月
治療回数7回
治療費除去・隔壁形成/18,700円(税込)
精密根管治療/85,600円(税込)
MTAセメント加算/26,400円(税込)
CT検査代/15,400円(税込)
リスクなど・5~10%の確率で将来歯根が膿んでくる可能性がある。
・ごく稀に、もともと歯根に亀裂が入っており、治療しても改善しない場合がある。
・歯の神経が非常に細いケースでは、場合によって完全に根管が閉鎖して治療しきれないこともあり、その場合は治療の成功確率が下がる可能性がある。
【注意点】根管治療だけでは治療は完結しません。通常はこの後、土台とかぶせ物が必要となります。費用もその分追加になります。
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