
抜歯診断から歯の保存を目指した精密根管治療症例
- こちらの患者さんは、かかりつけの歯科医院で抜歯が必要と診断されたそうです。歯の根に膿がたまっている。感染の範囲が大きいので抜歯という診断とのことでした。何とか歯を残したい!ということで、インターネットで当院を探して来院されました。
- 幸い、来院時に痛みや腫れはなかったのですが、右下の奥歯の頬側にサイナストラクトといわれる膿の出口を認めました。
口腔内所見。青丸部分がサイナストラクトという膿の出口となっています



- レントゲン撮影をしたところ、歯の根の周囲全体に感染が及んでいるのがわかりました(ピンクの塗りつぶし部分)
- また、根の先には以前の治療で折れたと思われる器具の一部が残っていました。(黄色矢印)
このような状態だと、多くの歯医者さんでは「抜歯」と言われると思います。膿が溜まっている範囲が大きく、リーマーという治療器具が歯の根の中で折れて取り除くことが非常に難しいからです。治る確率は低いということを理解していただいた上で、精密根管治療にて歯を残すことを希望されました。
CTにて3次元的に診断をしました。
CTでかなり大きな範囲で骨が溶けていることが確認できます。緑の矢印で示した部分は、膿の袋が下顎管という大きな神経・血管の管を圧迫していることがわかります。







被せ物、土台を除去します。この際、金属の土台だけを削って土台を取ることで、健全な歯を少しでも多く残すように十分に注意を払います。


土台を除去後、感染した部分を丁寧に取り除いていきます。


根の中を綺麗にしていくと予想通り、根の中にリーマーといわれる治療器具の一部が破折して残っていました。


根の中を徹底的に綺麗にしていきます。歯根の先の部分がしっかり確認でき、確実に感染部分を除去できていることがわかります。




治療前のCT画像↑
4ヶ月後のCTにて、溶けた顎の骨の回復が見られます。↓






感染がなくなったことを確認した上で、MTAセメントというセメントを歯の根の中に丁寧に詰めていきます。
精密根管治療の実施
治療開始から5ヶ月。溶けていた顎の骨が回復しています。


精密根管治療の実施
感染が大きく、残っている歯も少ないことから、歯が残せるか確認するため仮の歯で数ヶ月様子を見ることとしました。
精密根管治療の実施
術後10ヶ月。経過良好のため、仮の歯からきちんとした歯に置き換えていくこととしました。





治療前のCT画像↑
約11ヶ月後、溶けていた骨はほぼ完全に回復しました↓




長い期間がかかりましたが、抜歯せず歯を残せたことを大変喜んでおられました。今回治療した歯は、残っている歯がかなり少なくなって弱くなっています。今後はメンテナンスをしっかり行い、歯を大事に使って長く持たせましょう!
年齢/性別 | |
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治療期間 | 11ヶ月 |
治療回数 | 8回 |
治療費 | コア除去/18,700円(税込) 隔壁形成療/18,700円(税込) 精密根管治療/129,800円(税込) 根管内異物除去/37,400円(税込) MTAセメント/26,400円(税込) CT検査料/15,400円(税込) |
リスクなど | ・10~20%の確率で、将来歯の根の先に膿がたまる可能性がある。 歯の根が割れる可能性がある。 |